ごあいさつ

上 野 武 治

暑い8月に寄せて

─ 会長就任のご挨拶 ─

核戦争に反対する北海道医師・歯科医師の会

会 長  上野 武治

(北海道大学名誉教授)

暑い8月のこの時期、広島・長崎への原爆投下、ソ連の参戦、敗戦と、1945年の出来事が回想される。私にとっての出来事は、大学3年の時に参加した第10回原水禁世界大会(1964年)である。京都集会では米軍の北爆開始が伝えられ、ベトナム侵略が新たな段階に入ったことを実感した。広島集会では長崎原爆による下半身麻痺のため、母親に抱き抱えられながら核廃絶を訴えた渡辺千恵子さんの姿が今も目に焼き付いている。

あれから55年、核兵器禁止条約が採択されて2年、署名は70か国、批准は25か国に広がり、発効に必要な50か国も視野に入りつつある。国内では条約批准に向けての被爆者や高校生平和大使など、草の根の活動が条約に反対する現政権への圧力になっている。トランプ政権の限定核使用と中距離核ミサイル開発の政策は国際的な反核世論に火をつけ、条約の発効を早める結果になるかも知れない。しかし、私どもが突破しなければならないのは「核の傘」を是とする従属の思想である。

本会は福島原発事故の後、事業に「原発のない社会」を加えたが、国の福島における低線量・内部被曝軽視は広島・長崎の延長上のものである。この会には原発から国民の生命と健康はもとより、生態系を守る役割も期待されており、ぜひ活動に反映させて行かなければならない。

最後に、発足から30年の間、会長として本会を牽引された福地保馬先生の労をねぎらい、心から感謝を申し上げたい。先日、15年間の会報がまとめられたが、この期間でさえ本会が取り組んだ事業の幅と深さがお分かりいただけると思う。この財産を引き継ぎ、発展させることは並大抵ではないが、幸い塩川先生をはじめ事務局のメンバーは変わらず、心強い限りである。

以上、雑駁であるが、会長就任の決意としたい。 (2019年8月5日)

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